DDS Technology医療製剤(医療ドラックデリバリーシステム)/PLGA粒子受託研究
技術情報
当社ではDDS(ドラッグデリバリーシステム)キャリアとしてPLGAナノ粒子を用いた受託研究を行っています。PLGAナノ粒子に対象薬物を封入することでPLGAナノ粒子の特徴である浸透性や細胞内導入性、薬物徐放性を付与することが可能です。
▼PLGAに関する詳しい説明
・PLGAについて
乳酸とグリコール酸の共重合体ポリマーであり、加水分解により構成モノマー(乳酸、グリコール酸)に戻り、最終的にTCA回路を経て水と二酸化炭素に代謝されるため、体内蓄積性はなく安心安全な材料で知られています。古くは1980年代後半から長期徐放性の皮下注射製剤としてPLGAマイクロ粒子製剤が医薬品として承認・上市されはじめ、現在では10数種類にまで増加しています。
・PLGAナノ粒子について
当社では、球形晶析法を応用した「ESD法:水中エマルション溶媒拡散法」を用いてナノサイズのPLGA粒子を作製しています。
PLGA粒子は粒子径が減少するに伴い、比表面積の急増と体積減少により生体膜や粘膜層への滞留・付着性、浸透性が増強され、徐放効果と相まって薬物吸収性が向上し、細胞内導入性も発現します。
PLGAナノ粒子は封入された薬物の組織への浸透性を高めます。
蛍光モデル薬物であるクマリンを封入したPLGAナノ粒子およびPLGAマイクロ粒子を用いて腸管組織への浸透性を比較すると、マイクロ粒子は粘液層上部に留まり、浸透することができませんでしたが、ナノ粒子は腸管粘膜組織まで到達することが確認されました。
図 クマリン封入PLGAナノ粒子、マイクロ粒子の腸管内取り込み
スライド資料;愛知学院大学・川島教授に加筆
PLGAナノ粒子は封入された薬物の細胞内導入効率を高めます。
薬物(=蛍光タンパク質)封入PLGAナノ粒子の細胞内取り込みを検証した結果、粒子は単体と比べ細胞内導入効率が1.5倍向上させました。
図 蛍光タンパク質封入PLGAナノ粒子の細胞内取り込み
出典:The Micromeritics,65(2022),in press.
PLGAナノ粒子に封入された薬物はPLGAの加水分解に伴って徐放されます。
左図にあるように、PLGAに封入された薬物は表面担持型と比較して徐放性が付与されています。
【徐放性の制御因子】
①粒子径
②PLGAポリマーの種類
分子量、乳酸/グリコール酸比、末端基修飾など
図 核酸封入PLGAナノ粒子(3種)の溶出挙動
出典:J.Soc.Powder Technol.,44(2007)453-458
PLGAナノ粒子は封入された薬物の分解・失活を抑制します。
生体内環境(胃酸や腸内酵素)の影響を受けやすい核酸等の薬物は、in vivo系での薬物の分解・失活の回避が課題となります。
下図にあるように、PLGAに封入された核酸は胃内及び腸内を模した系では分解が抑制されていることがわかります。
図 核酸封入PLGAナノ粒子の分解抑制試験
出典:Biomaterials,32(2011)870-878.
吸入剤
血管拡張術後の血管再狭窄による心筋梗塞、狭心症が問題となっている。
そうした中、当社ではバルーンや金属ステント外表面に炎症反応を抑制する核酸(NF-kBデコイ) を封入したPLGA ナノ粒子による、核酸の細胞内デリバリーが可能となるDDS 型医療デバイスの開発に取り組んでいる。
出典:J.the Society of Powder Technology,Japan,42(11)(2005)765-772
医療機器
血管拡張術後の血管再狭窄による心筋梗塞、狭心症が問題となっている。
そうした中、当社ではバルーンや金属ステント外表面に炎症反応を抑制する核酸(NF-kBデコイ) を封入したPLGA ナノ粒子による、核酸の細胞内デリバリーが可能となるDDS 型医療デバイスの開発に取り組んでいる。
外用液剤(経皮吸収製剤)
PLGAナノ粒子の皮膚への浸透性・作用持続性を生かし、抗菌成分や育毛成分を封入したPLGAナノ粒子を塗布することで、
それぞれニキビ改善効果、育毛効果を見出すことに成功している。
出典:The Micromeritics,64(2021)62-68.
カプセル剤・錠剤(経口投与製剤)
患者のQOL の観点からも経口投与が究極のDDSと位置付けられている。
当社では核酸(NF-kBデコイ)封入PLGAナノ粒子の経口投与おける大腸炎モデル動物への有効性を示した。
出典:Biomaterials,32(2011)870-878
その他 (細胞内からの有用物質産生促進)
細胞内取り込みおよび封入成分の分解抑制に優れたPLGAナノ粒子により、
封入成分の効果的な送達を可能とし、目的遺伝子の発現、目的物質の生産量向上に成功した。
出典:The Micromeritics,64(2021)62-68.
内包薬物の実績例
投与部位 | 標的部位 | 作用 | 薬物 | 評価対象 | 結果 | 応用分野 | 引用 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
目 | 結膜 内皮細胞 |
局所 | 蛍光色素 | 細胞 | 培養ラット目瞼結膜内皮細胞に貪食 | 結膜疾患 | Pharm Res.2004,21(4):641-8 |
鼻 | 鼻粘膜 | 局所 | GFPプラスミド | マウス | 鼻粘膜に遺伝子発現 | 鼻粘膜疾患 (アレルギー疾患) |
J Nanosci Nanotechnol. 2004,4(8):990-4 |
口 | 腸管粘膜 | 全身 | カルシトニン | ラット | 腸管粘膜層に付着 粘膜内に侵入 |
注射製剤の代替製剤化 | Pharm.Develop.Tecnol.,2000,5,77-85 |
投与から数時間以内に腸管上皮を通過 | Damge C et al., J Control Rel 1990,13:233-239 | ||||||
大腸 | 局所 | ロリプラム | ラット | 炎症細胞に効率よく集積、 持続的な薬理効果を発揮 |
炎症性腸疾患 | J Pharmacol Exp Ther.2001,299:775-781 | |
NF-κBデコイ核酸 | マウス | 炎症性スコアを優位に低下 | Biomaterial,2011,32,870-878 | ||||
肺 | 肺胞 | 全身 | エルカトニン | モルモット | ナノ粒子から放出された薬物により 血中カルシトニン濃度が低下 |
注射製剤の代替製剤化 | J Control Release,2005,102,373-381 |
インスリン | ビーグル犬 | ナノ粒子から放出された薬物により 血糖値が低下 |
J Society of Powder Technology,2005,42,11,765-772 第23回日本DDS学会、2007,22,3,356 |
||||
関節窟 | 関節窟 | 局所 | 蛍光色素 | ラット | 炎症性関節滑膜中に移動、滞留 | 慢性関節疾患 | Pharm Res.2002,19(2):132-9 |
血管 | 血管 内皮細胞 |
局所 | 蛍光色素 GFPプラスミド |
ブタ | ステント留置後冠動脈平滑筋細胞内に貪食 | 薬物溶出ステント 動脈硬化症 血管再狭窄抑制 |
Jpn J Interv Cardiol,2007,22,3,201-210 |
デキサメタゾン | ラット | バルーン傷害部の新生内膜形成を抑制 | 動脈硬化症 | Circulation. 1996,94(6):1441-8 | |||
NF-κBデコイ核酸 | ウサギ | バルーン傷害部の狭窄抑制 | 薬物塗布型バルーンカテーテル 再狭窄抑制 |
Circulation: Cardiovascular Interventions 7.6 (2014): 787-79 | |||
皮膚 | 皮膚 | 局所 | ビタミンC 誘導体 |
細胞 | ヒト摘出皮膚片の 表皮、真皮まで送達 |
経皮製剤 (機能性化粧品等) |
J Society of Powder Technology,2004,41,12,867-875 |
NF-κBデコイ核酸 | マウス | 遅延型アレルギー反応を抑制 | 経皮製剤 (アトピー性皮膚炎) |
The First Asian Symposium on Pharmaceutical Sciences and Technology, 2007,86-89, July 28-30 |
受託研究の流れ
課題の概略についてご相談にお応えします。
お問い合わせ・ご相談は、受託研究前提でなくても結構です。
費用・納期についてもお気軽にお問合せください。
秘密保持を書面で確約後、詳細な内容及び背景となる情報を開示していただきます。
研究実施計画書案および見積書案を提示いたします。
実施計画書および見積書をご承認の上、契約を締結します。契約書の内容は個別に協議させていただきます。
実施計画書に基づく研究、試験または製造は、それぞれ担当者間で適宜連絡を交わしながら進めます。
薬理試験、安全性試験etc.
- PLGAナノ粒子設計、試作
(封入化検討)、機能性評価 - 特許出願
有効性、安全性(毒性)試験、体内動態評価etc.
受託研究
(共同研究・国家プロジェクト含む)
- 安全性(毒性)試験用PLGAナノ粒子製造(当社)
- 治験用PLGAナノ粒子製造(一部外部に技術移転)
- 各種粒子物性バリデーション、分析評価
- 工業化検討(実スケール製造技術開発と、製造技術移転)
測定可能な検査項目
研究・製造の完了時には報告書およびサンプルを提出・納品いたします。
■よくあるご質問
標準納期としてはご発注から2~3か月となっております
一般的にはPLGAと相溶性の高い脂溶性薬物が入りやすい傾向にあります。(封入率;数%~10%)
※水溶性薬物を効率的に封入させる新規製法もございます。
ナノ、マイクロのサイズ問わず、お受けいたします。
薬物、PLGAポリマーの種類にもよりますが数日~1週間の徐放性を付与できます。